株式会社Leacronは、設計支援ツール「Librizer(リブライザー)」において、新たにKiCad形式への対応を開始しました
LibrizerのKiCad対応の背景
電子回路設計では、新しい部品を使用する際に、データシートを確認しながらピン番号・ピン名称・パッケージ情報・寸法情報などを整理し、回路図シンボルやPCBフットプリントを手作業で作成しなければなりません。多くのEDAツールには既存の部品ライブラリが用意されています。一方、新しい部品や特殊な部品では目的のライブラリが存在しない場合もあります。
特に研究開発や試作開発の現場では、新しい部品を扱う機会が多く、部品ライブラリ作成が設計プロセスのボトルネックになることがあります。Leacronは自社でハードウェア開発を進める中でこの課題を実感し、自動化によって設計者がより本質的な回路設計や検証に時間を使えるようになることを目指し、Librizerの開発を進めてきました。
KiCadは個人開発者・研究者・スタートアップ・教育機関・オープンソースハードウェア開発者など、幅広い設計者に利用されているEDAツールです。今回のKiCad対応により、より多くの設計者がLibrizerを自身の設計環境に取り入れやすくなりました。
Librizerの主な特徴と独自技術
Librizerが提供する主な自動生成機能は、以下の3点です。
- データシートのピン情報をAIが解析し、回路図シンボルを自動生成
- パッケージ情報をもとにPCB設計用フットプリントを自動生成
- 回路図シンボルとPCBフットプリントを一括生成
回路図シンボルの生成では、ピン番号・ピン名称・ピン配置などをもとに、EDAツール上で利用しやすい部品シンボルを出力します。PCBフットプリントの生成では、パッド配置・ピンピッチ・外形寸法などの情報を解析し、PCB設計の前工程を効率化しました。一括生成機能によって、EDAツールで使用可能な部品ライブラリを短時間で作成できます。
高精度なPCBフットプリント生成を実現するため、LibrizerはVLM(Vision Language Model)による解析と古典的な図形処理を組み合わせた「ハイブリッド・アプローチ」を採用しています。
ハイブリッド・アプローチでは、3ステップで寸法情報を取得します。まずVLM(Vision Language Model)で寸法情報を取得し、次に古典的アルゴリズムで図形を推定しました。最後に図形推定結果をもとに再度VLMで寸法情報を取得した上で、古典的な図形解析との組み合わせによって取得精度を高めた設計です。VLM単体ではデータシート上の図面や寸法情報の読み取りに誤差が生じる場合があるため、このアプローチが有効です。
Librizer(リブライザー)概要
Librizerの基本情報は以下の通りです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| ツール名 | Librizer(リブライザー) |
| カテゴリ | 設計支援ツール |
| 対応形式 | KiCad形式 |
| 主な機能 | 回路図シンボル・PCBフットプリントの自動生成 |
| 採用技術 | VLM(Vision Language Model)・ハイブリッド・アプローチ |
| 開発元 | 株式会社Leacron(東京科学大学〈旧東京工業大学〉発スタートアップ) |
| 代表者 | 代表取締役社長 高安優多氏 |
| 所在地 | 東京都渋谷区恵比寿西二丁目8番4号 EX恵比寿西ビル5階 |
| 設立 | 2025年1月30日 |
| コーポレートサイト | https://www.leacron.com/ |
trends編集部の一言
電子部品のデータシートから回路図シンボルとPCBフットプリントを自動生成するというアプローチは、専門性の高い作業を構造化・自動化するという意味で、業界を超えた示唆を持つ取り組みです。マーケティング業界の文脈に置き換えると、ブリーフをもとに定型構造のアウトプットを手作業で仕上げる工程での工数負荷は業界横断で語られてきたテーマであり、「情報を入力するだけで使用可能なファイルが出力される」という設計思想は、業界全体の作業プロセス転換を象徴する動きと読み取れます。
VLM単体の誤差を古典的な図形解析で補うハイブリッド・アプローチは、AIの出力精度に対する実務的な懸念に応える設計です。生成AIへの不安は業界を問わず共通であり、精度担保の仕組みを明示している点は、研究開発・試作開発領域では本格導入を見据えた動向として注目されます。
References
- ^ PR TIMES. 「回路ライブラリ作成AI「Librizer」がKiCadに対応。データシートからシンボル・フットプリントを自動生成し、設計工数削減を支援 | 株式会社Leacronのプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000178950.html, (参照 26-05-20).
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