生成AIによって、専門職が独占していた知識へのアクセス格差は急速に縮まっています。マーケティング、エンジニアリング、PM、経営、どの領域でも「知っていること」そのものの価値は相対的に下がりつつあります。
しかし、専門性が不要になったわけではありません。むしろ重要になるのは、1つの専門領域を深める力に加えて、他領域の知識と接続し、変数を読み解き、リスクを見極め、成果に落とし込む力です。
本記事では、業務委託として複数の企業・プロジェクトに関わり、また一つの事業を部長・リーダーとして開発から仕入れまで一気通貫で見てきた立場から、AI時代に専門職がどう変わるべきかを整理します。
目次
- 「知っている」ことの値段が、AIによって下がった
- 情報はコピーできても、判断はコピーできない
- 専門家の経験則すら、AIで先回りできる時代
- 選択肢が増えたのに、選べない・選び間違えるというカオス
- 1つの成果は、もう1つの専門領域では決まらない
- 「自分の担当ではない」が通用しなくなる理由
- 事業を丸ごと見てきたからこそ見える、縦割り構造はエンタープライズだけの話ではない
- これからの専門家に必要な3つの力
- 次回予告:AIに選ばれることが、広告やSEOより安いCPAを生む時代へ
- 結論:専門家は「領域の番人」ではなく「成果の接続者」になる
- コンセプト解説:なぜ私はこの言葉を掲げるのか
- 法人向け研修のご案内
スピーカー
マーケティング部
「知っている」ことの値段が、AIによって下がった
これまで専門職の強みの一部は、単純に「その分野の知識を持っていること」だった。
エンジニアであれば技術用語や実装方法。マーケターであれば施策設計や分析手法。PMであれば要件整理や進行管理。経営であれば事業戦略や組織設計。
こうした知識の多くは、本来はタダでは手に入らないものだった。現場で失敗して学ぶ。先輩に教わる。研修費を払う。コンサルタントに相談料を払う。何年もその業界にいて、ようやく体系立って理解できる。つまり、時間・失敗・お金という「対価」を払って初めて得られる情報だった。
生成AIは、この構造を変えた。以前なら経験者に聞くか、書籍を何冊も読むか、有料のセミナーに出るしかなかったような知識に、誰でも数秒でアクセスできるようになっている。
つまり、「知らないからできない」という壁は、確実に低くなった。
【補足】知識の値段が下がっても、価値がゼロになるわけではない
知識の希少性が下がったからといって、知識の価値がゼロになったわけではない。値段が下がったのは、あくまで「情報へのアクセスコスト」であって、「その情報を正しく使う力」の値段は、むしろ上がっている。
情報はコピーできても、判断はコピーできない
ここが今回いちばん伝えたい論点になる。
AIによって、これまで経験や対価を払わないと得られなかった知識に、誰もが容易にアクセスできるようになった。しかし、同じ情報を受け取っても、受け手によってその情報の価値はまったく変わる。
たとえば「このマーケティング施策のリスクを教えてほしい」とAIに聞けば、それなりに筋の通った回答が返ってくる。しかし、その回答を読んで、
- 自社の状況に当てはまる部分と当てはまらない部分を切り分けられるか。
- 挙げられたリスクの中で、優先して潰すべきものはどれか判断できるか。
- 逆に、AIが挙げなかった自社特有のリスクに気づけるか。
ここまでできて初めて、その情報は「価値のある情報」になる。できなければ、それはただの文字列でしかない。
同じ医学情報がインターネットに公開されていても、それを読んだ人が全員医師と同じ判断をできるわけではないのと同じ構造だ。情報の民主化は、判断力の民主化を意味しない。
つまりAI時代に問われているのは、情報を持っているかどうかではなく、受け取った情報を、自分の文脈というフィルターに通して、意味のある判断に変換できるかどうか、である。
専門家の経験則すら、AIで先回りできる時代
とはいえ、知識差が縮まっても、専門職の価値がすべてなくなるわけではない。
本職の担当者には、経験則、判断基準、失敗パターン、現場感、知識の幅がある。同じマーケティング施策を見ても、経験者は「この数字は良さそうに見えるが、継続性が弱い」「このCVRは高いが、商談化率が落ちる可能性がある」と判断できる。エンジニアであれば、「この実装は動くが、保守性が低い」「短期的にはよいが、後で技術負債になる」と見抜ける。
差が出るのは知識そのものではなく、その知識をどの場面で使うか、どこにリスクがあるか、何を優先すべきかを判断する力である。
ただし、ここにも留保が必要になっている。専門職の経験則やリスク感覚さえ、生成AIを使えばある程度は事前に補助できるようになってきているからだ。
たとえば、施策を実行する前にAIへ次のように確認できる。
- この施策のリスクは何か。
- 見落としやすい論点は何か。
- 専門家ならどこを懸念するか。
- 失敗パターンを挙げてほしい。
- エンジニア・マーケター・経営者、それぞれの視点でレビューしてほしい。
こうした使い方をすれば、経験が浅い人でも事前に論点を広げることができる。つまりAI時代は、「知らないこと」だけでなく、「気づけないこと」もある程度補えるようになっている。
だからこそ、本職の担当者が「自分は経験があるから大丈夫」と考えているだけでは、むしろ危ない。経験の価値は消えないが、経験に安住した瞬間から、その優位性は目減りしていく。
選択肢が増えたのに、選べない・選び間違えるというカオス
ここで一度立ち止まりたい。
世の中では「生成AIで◯◯業界はこう変わる」「このAIモデルはこれが得意」といった、分野別・モデル別の紹介記事が数多く出ている。それ自体は有益な情報だが、こうした情報の増加が起こしているもう1つの現象にも目を向ける必要がある。
情報へのアクセスが容易になった結果、人間側が持つ「選択肢」は急激に増えた。そして選択肢が増えたということは、必ずしも良いことばかりではない。
- どの施策が自社に合うのか、選べない。
- 選んだとしても、その選択が正しいのか判断できない。
- 複数のAIやツールの提案が矛盾しており、どれを信じればいいかわからない。
- 情報量が多すぎて、結局何も決められないまま時間だけが過ぎる。
これは心理学でいう「選択のパラドックス(choice overload)」に近い状態が、あらゆる業務領域で起き始めているということだ。
AIが選択肢を大量に出してくれる時代だからこそ、選ぶ力・疑う力・決める力がなければ、情報は多いのに前に進めないという逆説的な状況に陥る。
【補足】情報を持て余す人と、絞り込んで動ける人
知識へのアクセスが容易になったことは、間違いなく良いことだ。しかし、それは同時に「情報を持て余す人」と「情報を的確に絞り込んで動ける人」の差を、これまで以上にはっきりさせている。
1つの成果は、もう1つの専門領域では決まらない
これまでは、1つの領域を深く理解していることが専門性として評価されやすかった。今でも深さは重要で、浅い知識だけで複数領域を語る人は、結局どの現場でも信用されない。
ただし、1つを深めるだけでは不十分になっている。なぜなら、実際の仕事では、1つの成果が1つの専門領域だけで決まることはほとんどないからだ。
マーケティング施策の成果は、広告運用だけで決まらない。LP、営業体制、商材理解、顧客課題、価格設計、ブランド、オペレーションまで影響する。開発もコードだけで決まらない。要件定義、事業優先度、UX、運用、セキュリティ、保守性、チーム体制が絡む。経営であればなおさら、採用、財務、営業、開発、マーケティング、組織文化、意思決定のすべてがつながっている。
1つの事柄には、常に複数の変数が絡んでいる。だから、これからの専門性は「深さ」に加えて、「接続」が必要になる。
| 専門領域 | 単体で見ていたこと | 実際に成果を左右する接続範囲 |
|---|---|---|
| マーケティング | 広告のクリエイティブ・入札 | LP設計、営業接続、商材理解、価格、ブランド |
| 開発 | コードの実装品質 | 要件定義、事業優先度、UX、保守性、体制 |
| PM | 進行管理・スケジュール | 設計判断、フロント/バックのトレードオフ、顧客理解 |
| 経営 | 事業戦略・数値目標 | 採用、財務、現場のオペレーション、組織文化 |
「自分の担当ではない」が通用しなくなる理由
AI時代に危ないのは、自分の職能を狭く定義しすぎることだ。
「自分はPMだから開発は分からない」「自分はエンジニアだからマーケは関係ない」「自分はマーケターだから事業計画は見ない」「自分は経営側だから現場の細部は知らなくていい」。こうした分断は、以前よりもリスクが大きくなっている。
なぜなら、AIによって他領域の知識にアクセスしやすくなったことで、職能間の境界が薄くなっているからだ。今後は、専門外の領域を完璧に実行できる必要はない。しかし、会話できるレベルで理解し、相手の判断軸を想像できることは必要になる。
専門職に求められるのは、「自分の領域だけ守ること」ではなく、他領域と接続して成果を出すことになる。
事業を丸ごと見てきたからこそ見える、縦割り構造はエンタープライズだけの話ではない
この視点は、業務委託として複数の企業やプロジェクトに関わってきた経験だけでなく、少なくとも一つの事業において、部長・リーダーという立場で、開発、商品選定、マーケティング、仕入れまでを一気通貫で見てきた経験の両方から強く感じている部分でもある。
事業を丸ごと見るというのは、単に「複数の業務を兼任する」ということではない。仕入れの条件が変われば、価格設計が変わる。価格設計が変われば、訴求するべき顧客層が変わる。顧客層が変われば、必要なマーケティング施策が変わる。マーケティングの成果は、商品開発の優先順位にフィードバックされるべきものになる。1つの意思決定が、他のすべての工程に波及していく感覚を、現場で持ち続けなければならない立場だった。
一方で、業務委託という立場で複数の企業に外部から関わると、また違う見え方をする。ある現場ではマーケターとして入り、別の現場ではコンサルティングに近い立場で入り、また別の現場では実行プレイヤーとして動く。その中で見えてくるのは、成果が出ない原因は、単一の職能の中だけにあるわけではないということだ。
マーケティングが弱いと思っていたら、実は営業接続が弱い。開発が遅いと思っていたら、実は要件定義が曖昧。施策が伸びないと思っていたら、実は経営側の優先順位がブレている。現場が動かないと思っていたら、実は意思決定構造に問題がある。この2つの立場、つまり「全工程を自分で回してきた立場」と「外部から複数の職能をまたいで見てきた立場」を重ねると、縦割り構造が引き起こす問題は、想像以上に共通していることがわかる。
この構造は、エンタープライズ企業に多いというイメージを持たれがちだが、実際には中小企業にも当たり前に存在している。エンタープライズでは、部署が細分化されていることで縦割りが起きる。中小企業では、限られた人数の中で「この人はこの担当」という役割分担が固定化されることで、同じ縦割りが起きる。規模は違っても、「この分野は自分の担当ではない」という線引きが長年通用してきた組織ほど、この構造が根深く残っている。
たとえば、Webサイト自体を作った経験が私的にも社内でも一度もないまま、ワイヤーフレームが引けるという理由だけでPMを担当しているケースは、エンタープライズ企業にも中小企業にも一定数存在する。デザインが分かっていたとしても、Webデザインは紙やプロダクトのデザインとは役割も目的も、同じ課題への向き合い方も大きく異なる。レスポンシブ対応や、検索エンジンが推奨するページ設計の作法といった領域を理解できていない場合も多い。こうした点を指摘しても、「エンタープライズ企業だから問題ない」「うちのような小さな会社ではそこまでやらなくていい」という反応が返ってくることも珍しくない。企業規模を理由にする反応そのものが、実は同じ根っこから出ている。
事業を全工程で見てきた立場からも、外部から複数の役割で関わる立場からも、共通して見えてくるのは、職能ごとの部分最適ではなく、全体の接続不良こそが成果を左右しているという事実だ。かつては、こうした縦割り構造にも一定の合理性があった。専門が細分化されているほど、それぞれの担当者が深く極めることができたからだ。しかし、AIによって基礎知識へのアクセス格差が縮まった今、「この分野以外は知らない」で押し通せる領域は、企業規模を問わず急速に狭くなっている。
だからこそ、これからの人材には「専門性」だけでなく、「構造を見る力」が必要になる。1つの領域を軸にしながら、周辺領域とのバリューチェーンを描き、どこをどう接続すれば最も成果につながるかを設計できる人材だ。これは、これまで専門特化だけで評価されてきた人にとっても、逆にチャンスがある領域だと考えている。自分の専門を軸足にしたまま、相対的な他領域との接続点を学び直せばいいからだ。
これからの専門家に必要な3つの力
【AI時代に必要な3つの力】
1つの専門性を深く極めるだけでは足りない時代。これからの専門家には、以下の3つの力が求められる。
- ①深める力:自分の専門領域を持つことは今後も重要。AIがあるからこそ、浅い理解ではすぐに見抜かれる。
- ②接続する力:自分の領域と、他領域の関係性を理解する力。マーケ・開発・営業・PM・経営のどこがどう影響し合っているかを見る力が必要になる。
- ③選ぶ・問う力:AIに何を聞くか。どの前提を疑うか。どのリスクを洗い出すか。増えすぎた選択肢の中から、何を採用し、何を捨てるか。
AI時代に差が出るのは、答えを知っている人ではなく、良い問いを立て、増えた選択肢の中から正しく選び取れる人である。
次回予告:AIに選ばれることが、広告やSEOより安いCPAを生む時代へ
ここまでの話は、あくまで「人材」と「組織」の話だった。ここに、もう1つ重要な変数として「データ」が絡んでくる。次回はこの観点を掘り下げるが、その前提として、今回の記事の延長線上にある論点をいくつか置いておきたい。
「わからない」を専門性だと思っていないか
近年、AI検索やAIによるレコメンドを経由して獲得した顧客のほうが、従来の広告やオーガニック検索経由よりもCPA(顧客獲得単価)が低いケースが報告され始めている。もしこの傾向が構造的なものだとすれば、これまで「自社には関係ない」としてSEOの作法を軽視してきた多くの企業も、AIに情報を正しく参照してもらうための対策を避けて通れなくなる。
ここで一度、広告やSEOを担当している側にも問いを向けたい。人件費を含めたコストに対して、自分たちが生み出しているROASや付加価値を、資産として説明できる担当者はどれくらいいるだろうか。広告担当者は本来、SEO担当者以上にCVにつながるキーワードを把握していて当然の立場のはずだ。それにもかかわらず、「他社がこうしているから」「過去にコンバージョンがあったから」「季節要因だから」としか説明できない担当者に、本当に価値があると言えるだろうか。
これは特別厳しい話ではない。毎月大きな予算を投下する広告運用は、本来、経営の意思決定そのものである。実際、世界最大級のオンライン旅行代理店であるBooking.comを傘下に持つBooking Holdingsでは、CEOのグレン・フォーゲル氏自身が、広告のROIや、Googleをはじめとする特定プラットフォームへの依存度をどう下げるかという戦略に、長年にわたって直接関与してきたことが知られている。会社全体の利益に直結する意思決定だからだ。SEOについても、本質的には同じ話のはずである。
AI対策とSEOは、本当に別物か
近年、生成AIの普及によって「AI向けのSEO対策」という文脈で、これまでSEO対策をまともに行ってこなかった企業を多く見かけるようになった。SEOとAI時代のコンテンツ最適化は、細部の手法にこそ違いはあっても、根本的にやっていることは変わらない。インターネット上のコンテンツを、対象となるアルゴリズムに正しく評価させる。これだけの話である。戦略的な力点の置き方に違いはあっても、本質はほとんど変わらない。冷静に考えれば分かることだ。
ただし、日本国内では特に、SEOがエンジニアリングとの関わりを深めるにつれて、中小企業に合った規模感でのSEOやAI対策であっても、リライトや新規コンテンツの構成づくりに多大な費用が要求されるケースが依然として多い。これ自体を否定するつもりはないが、本質的にはもっとシンプルな話であるはずだ。
そして何より、順位が上がった、AIに引用されるようになった、という状態そのものをゴールにしてしまうと、結局は冒頭から述べてきた「一分野にだけ特化する」姿勢と変わらない。木を見て森を見ない状態だ。集客の入口から、成約という出口までを1本のバリューチェーンとして定義し、その全工程を最適に運用しなければ、いわゆる「漏れバケツ(leaky bucket)」の状態、つまり水を注いでも底から漏れ続け、利益が残らない状態に陥る。
社内の「エース」が事業を動かすときに起きること
もう1つ、これまで数多く見てきた失敗パターンを紹介したい。エース級のエンジニアや営業担当者が発案した企画が、社内で強い期待を受けて事業やサービスとしてリリースされるケースだ。こうした案件は、大半が失敗し、しかもその後の足かせになるケースが多い。
理由は明確だ。その人物は、社内でエースであり、市場的にも一定の実力があるかもしれない。しかし、あくまで1つの領域のエースにすぎない。それにもかかわらず、その領域のエースが発言すると、なぜか社内では「この人が言うなら売れるかもしれない」「絶対にいける」という空気になり、周囲の思考が止まってしまう。
1つの利益が生まれるまでには、集客、運営、サービス提供、クロージングという複数の工程があり、それぞれの工程で顧客に満足を感じてもらい、対価を払う価値があると納得してもらって初めて購入という行動につながる。1つの分野に特化したエースの発案だけでは、この一連の工程全体を担保できない。うまくいかないのは、当然の結果である。
さらにタチが悪いのは、その後の対応だ。事業が思うように利益を生まない状況になっても、新しいチャネルや新規顧客の開拓に向かわず、既存のうまくいっているサービスの顧客に対して、新しいプランとして売り込んでしまうケースが多く見られる。結果として、既存サービスへの満足度まで分散させ、屋台骨だったサービスごと「押し売り」のように受け取られ、満足度が下がり、契約自体が打ち切られるという事態に発展する。
こうしたケースでは、あらかじめ撤退ラインが引かれていないことも多い。これらは、少し考えれば分かることばかりだ。思考を止めてはいけない。組織に属している以上、会社の意思決定も自分ごととして捉える必要がある。そして、こうした構造は生成AIが登場する以前からそこら中で起きていたことであり、生成AIが登場した後も、残念ながらほとんど変わっていない。
【補足】では、どうするべきか
データを見ながら、適切な範囲をインハウスで運用し、わからない部分は生成AIをメンターのように迎え入れつつ、それを一部の担当者や一部のエースだけの課題にせず、全社で重要な経営課題として共有しながら運用していく。そのほうが、外部に丸投げするよりも、あるいは一部の「エース」に依存するよりも、はるかに価値が高い結果につながるはずだ。
次回は、この「データを見れば分かること」という観点から、AI時代のマーケティング投資配分について、CPAの実データも交えながら掘り下げていきたい。
結論:専門家は「領域の番人」ではなく「成果の接続者」になる
これからも、1つの専門性を深めることは重要である。ただし、それだけではもう十分ではない。
AIによって知識のアクセス差が縮まる一方で、その情報をどう解釈し、どう自分の文脈に落とし込むかという判断力の差は、むしろ広がっている。選択肢が増えたことで、選べない・選び間違えるという新しいカオスも生まれている。
こうした状況だからこそ、専門家に求められるのは、自分の領域を深く理解しながら、他領域と接続し、全体の成果に変換できる力である。
エンジニアは開発だけを見ていればいいわけではない。マーケターは施策だけを見ていればいいわけではない。PMは進行管理だけを見ていればいいわけではない。経営者は大きな方針だけを見ていればいいわけではない。
1つの成果は、複数の変数が絡み合って生まれる。だからこそ、AI時代の専門性は「深さ」から「接続」へ広がっていく。これから強いのは、専門領域を持ちながら、領域を越えて考え、動き、成果につなげられる人である。
コンセプト解説:なぜ私はこの言葉を掲げるのか
「やれるけどやっていない」は「できない」と一緒。
この言葉は、私自身に対する戒めであり、私の仕事の流儀そのものです。なぜ、あえて「やれる」という言葉を使うのか。それは、安易な「やれる」という言葉が、実行に至るまでの膨大なプロセスを隠蔽してしまうからです。
1. 「やれる」は氷山の一角に過ぎない
エンジニアとしてコードを書き、マーケターとして戦略を練る中で痛感するのは、物事の複雑さです。「やれる」と口にする時、それは往々にして水面上の数%しか見えていない状態です。水面下には、予期せぬエラー、市場の変動、実装の制約といった「見えないコスト」が山積みになっています。その全貌を掌握せず「やれる」と安易に言うことは、本質に対する冒涜であり、プロフェッショナルとしての誠実さに欠ける行為だと私は考えます。
2. 徹底的な「解像度」の追求こそが成長である
私が追い求めているのは、概念としての「やれる」ではなく、結果としての「できた」です。そのためには、見えている表面的な事象を突き崩し、その裏側に何があるのかを徹底的に調査し尽くす必要があります。この「解像度を上げる作業」そのものが、エンジニア兼マーケターとしての私の成長エンジンであり、学びのすべてです。
3. インプットとアウトプットによる「血肉化」
「やれる」から「できた」へ至る道のりは、座学だけでは決して渡り切れません。調査し、考え、実際に動かし、失敗して修正する。この絶え間ないインプットとアウトプットのサイクルこそが、理論を実践に変え、アイデアを価値に変換します。私は自分自身に対して、常にこの過酷なサイクルを課しています。
結論として
私は、自分が「やれる(=頭の中ではできると思っている)」という状態に安住することを自分に許しません。見えない部分を想像し、泥臭い調査と検証を厭わず、最後には必ず「できた」という形ある結果で示す。この一貫した姿勢こそが、私の価値であり、私という人間がマーケターとして活動する理由です。
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DXを進めたいが、部署ごとに知識や活用レベルがバラバラで、組織としての方針を整理したい。
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執筆:コードキャンプ株式会社 マーケティング部 田中 裕貴

