代替される仕事、進化する社会。AIと共に歩む未来像とは?

代替される仕事、進化する社会。AIと共に歩む未来像とは?

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だーだい
フリーランスWebライター兼Web製作者。Webライターとしてガジェットメディアやプログラミングに関する記事を執筆する傍ら、LP制作とWordPressの改修案件もこなしつつ、活動しています。 profile

前記事でAIの重要性や、すでにビジネスシーンで導入されていることについて紹介した。

停滞する日本経済とIT後進国の現実。IT技術の理解から始まるAI活用の可能性
停滞する日本経済とIT後進国の現実。IT技術の理解から始まるAI活用の可能性

しかしAIについて懐疑的な意見もある。たとえばガードナーが公開しているハイプサイクルでは、生成AIが幻滅期に入っていると発表している。[1]

ハイプサイクル(Hype Cycle)とは技術や新しいアイデアがどのように広まるか、その過程をモデル化した図や考え方。

また、AIが新しい技術や製品が市場に広がる途中で直面する壁(キャズム)を超えられず広く普及しないという意見も見られる。

キャズムとは

キャズムを超えるにはイノベーター理論の段階であるアーリーアダプターと、アーリーマジョリティにおける価値観のギャップが課題だ。ハイプサイクルにおいて生成AIが幻滅期に位置付けられているのは、このようなキャズムの最中である可能性が高い。

AIなど新しい技術を取り入れる際、リスクヘッジとしてこのようなデータを参考にすることが必要だ。導入のタイミングを誤ると、うまく活用できず失敗する可能性がある。

とはいえデータだけを検討材料にするのも危険だ。市場は常に変化しており、データが出るタイミングと実際の市場状況にはズレが生じることが多い。

「キャズムを超えた」というデータが示された段階ではすでに先行者たちが優位に立っており、行動が遅れるリスクがある。身近な例だとYouTuberなどが該当するだろう。

そのためデータのチェックと併せて、各業種におけるAIの活用事例や市場の動向なども確認し、意思決定することが重要だ。では実際にAIがどう活用されているのか見ていこう。

AIの活用事例

AIに悲観的であるデータとは裏腹に、さまざまな業界の製品に活用されている。本項目ではその具体例をいくつか紹介する。

【イオンリテール株式会社】AIオーダーシステムを開発

イオンリテール株式会社では、AIを活用した「AIオーダー」システムを国内約380店舗で展開している。[2]

AIオーダーシステム導入前

イオンリテール株式会社:AIオーダーシステムを開発

PRTimesより

導入後

イオンリテール株式会社:AIオーダーシステムを開発

PRTimesより

このシステムは顧客数や売上データを基に、最適な発注量を自動計算できるのが特徴。発注業務の時間を約半分に短縮するとともに、発注精度を最大で40%向上させる成果を上げている。

【JPモルガン】株価指数を分析するQuest IndexGPTを開発

JPモルガンはAI技術を活用し、効率的で正確な株価指数「Quest IndexGPT」を開発した。[3]

OpenAIのGPT-4を使用して特定テーマに関連するキーワードを生成、そのキーワードをもとに企業やニュースを分析してインデックスを構築できるのが特徴だ。

このサービスは2024年5月にリリースされ、顧客からの評価も高い。AIを活用したインデックス構築により、スピードや精度が向上している。

【株式会社クボタ】AIで無人自動運転のコンバイン

株式会社クボタはAI技術を活用した無人自動運転コンバイン「アグリロボコンバインDRH1200A-A」を発売した。[4]

AIカメラとミリ波レーダで稲や麦を認識しながら、人や障害物も検知して安全に収穫作業を進められるのが特徴だ。

操作は簡単で、最初にほ場を1周するだけでAIが収穫ルートを自動生成。倒伏した作物の収穫や詰まりの自動解消も可能だ。さらにリモコンで遠隔操作ができるため、監視者の負担も軽減する。

この製品は人手不足や作業効率化の課題解決を目指したスマート農業の新しい形を示しており、農業の未来を切り開く一歩となるだろう。

【マルハニチロ株式会社】AI技術を活用した尾数計数機「かうんとと」を開発

マルハニチロはAI技術を活用した尾数計数機「かうんとと」を開発し、養殖魚の計数作業を自動化した。[5]これまで人手で行われていた沖合船上での計数作業をAIがカメラで魚を認識し、高精度でカウントすることが可能だ。

このシステムにより人為ミスの軽減や作業負担の削減、コスト削減が可能となり、少人数での効率的な養殖運営を実現できる。現在はブリやカンパチで運用されているが、稚魚や他魚種への拡大も進めている。

【鹿島建設株式会社】建設における自動計測するシステムを開発

鹿島建設株式会社は画像AIを活用し、技能者の人数と作業時間を自動計測するシステムを開発した。[6]本システムは手作業で行われていた「歩掛(作業手間の数値化)」をリアルタイムで正確に算出でき、生産性向上につながるのが魅力だ。

市販のカメラを使いAIで映像を解析。工事進捗とも連携してデータはクラウドに保存され、遠隔確認も可能。橋梁建設現場での実証では無人で正確な計測が実現し、調査負担が大幅に軽減された。

このように水産業から建設業まで、幅広い業種のシステムや製品にAIが活用されている。現時点でAIが全ての仕事を代替できないが、AIが補える作業範囲は広まりつつあるのが現状だ。

今後はほとんどの仕事でAIが導入され、人と共存する未来が訪れる可能性は高いと言えるだろう。

AIの進化によって変わるITスキルの価値

AIの進化によって変わるITスキルの価値

AIと人間が共存する未来の訪れと同様に、プログラミング周りにも大きな変化をもたらしている。AIが台頭してきたことでよく指摘されるのが、将来的にはプログラマーが行う単純なコーディング作業の多くをAIが代替する可能性だ。

AIを活用することで遥かに人よりも早くコードを作ることはできる。だからといって、プログラミング自体やITに関する知識がいらなくなるわけじゃない。

むしろAIが高度な開発支援をする時代こそ、ITの基本や仕組みをしっかり理解して、AIが生成したコードの品質や正確性を判断したり、求める結果に合わせて的確な指示を出したりするスキルが欠かせない。

結果的にITリテラシーやテクノロジーを使いこなす能力は、これまで以上に重要になるといえる。 つまりAI時代に求められるのは人間が何を目標として設定し、AIにどのようなタスクを与えるかという発想である。

それにはベースとなるIT知識や、生成物を評価できる眼識が欠かせない。これから先は「AIをどう使いこなすか」がビジネスや戦略での勝ち筋になってくる。 

AIありきの社会へ。進化スピードが示す未来の方向性

AIの驚くべき点は進化スピードの速さだ。年々予想を超えるスピードで成長しており、その速さはAI技術の最先端にいる有識者たちがAGI登場の予想を数年早めるほどである。

たとえばOpen AIのCEOであるサム・アルトマン氏は以前、AGI(汎用人工知能)の実現時期は2029年以降と予測していた。

しかし最近行われたY Combinatorによるインタビューでは、技術の急速な進展を踏まえて2025年までにAGIが実現する可能性があると述べている。

また、ソフトバンク株式会社の孫正義氏は、法人向けイベント「SoftBank World 2024」にてAGIは2、3年後にやってくると考えていると語っている。[7]

昨年のSoftBank WorldではAGIが10年以内に到来するとしていた予測を、今年は2~3年後にまで縮めた。それだけAIが高速で成長しているのだ。

また、孫正義氏はAIの急速な進化によって「超知性」の時代が数年以内に到来し、人間の知能を凌駕したAIが各個人を支援する「パーソナルメンター」として機能する未来を予測している。

「超知性」とは人間の知能をはるかに超える能力を持つAIのこと。汎用人工知能(AGI)の能力を1万倍以上超える存在として位置づけられています。超知性は単なる情報処理能力の向上にとどまらず、思いやりや調和といった人間的な特性も備えるとされているのが特徴です。

同氏はこのような未来に対応するためにもAIを積極的に活用し、超知性の時代に備える必要があると強調している。

これまでの現状を踏まえると、今後の社会はAIを基盤とした仕組みや価値観で動く可能性が高いと言える。

AIありきの社会で生き抜くためには、ITの基本や仕組みをしっかり理解してAIを効果的かつ柔軟に使いこなす能力が求められる。そのためには企業および個人のアップデートが欠かせない。

次回は、IT・AIありきの社会で生き残るために必要なアップデートについて見ていこう

References

  1. ^ ガートナージャパン株式会社. 「生成AIのハイプ・サイクル:2024年」. https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20240910-genai-hc, (参照 2024-12-04).
  2. ^ イオンリテール株式会社. 「AIオーダーシステム」. https://www.aeonretail.jp/pdf/230420R_1.pdf, (参照 2024-12-05).
  3. ^ J.P. Morgan. 「Quest IndexGPT」. https://www.jpmorgan.com/insights/markets/indices/indexgpt?utm_source=chatgpt.com , (参照 2024-12-05).
  4. ^ 株式会社クボタ. 「世界初!無人自動運転でコメ・麦の収穫が可能なコンバインを発売」. https://www.kubota.co.jp/news/2023/newproduct-20230614.html, (参照 2024-12-05).
  5. ^ マルハニチロ株式会社. 「成魚AIカウンター『かうんとと』 開発」. https://www.maruha-nichiro.co.jp/laboratory/report/report05.html, (参照 2024-12-05).
  6. ^ 鹿島建設株式会社. 「画像AIを用いて技能者の人数と作業時間をリアルタイムかつ正確に、自動で把握するシステムを開発」. https://www.kajima.co.jp/news/press/202402/29c1-j.htm, (参照 2024-12-05).
  7. ^ ソフトバンク株式会社. 「AIは数年で超知性へと進化し、パーソナルメンターに。孫正義 特別講演レポート」. https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202410/sbw2024-softbank-son-main-keynote/, (参照 2024-12-06).
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