トラスコ中山株式会社と富士通株式会社は、AIと数理最適化モデルを活用した人事異動支援アプリケーション「AI人事異動「お善立て」」の活用を開始しました。
約4か月という短期間でアプリケーションを構築した点も、本取り組みの特徴のひとつです。
トラスコ中山における複雑な人事異動プロセスの背景と課題
トラスコ中山株式会社は、部門を越えた人事異動を通じて、従業員の成長と組織全体の最適化を図る人材戦略を推進してきました。多様な人事制度を設けてきた結果、異動案の検討で考慮すべき事項が複雑化し、意思決定に多大な時間を要していました。
1回の人事異動でおよそ100人規模の配置を検討することもあり、その組み合わせは10の158乗通りにも及びます。所属年数、職種、通勤時間といった定量的な項目に加え、世帯状況や社内婚に伴う調整など、従業員それぞれの事情を踏まえた多角的な判断が求められる業務です。
Fujitsu Data Intelligence PaaSを活用した開発体制と伴走プロセス
本取り組みでは、富士通株式会社のFDE(Forward Deployed Engineer)が、トラスコ中山の人事部門に入り込み、業務理解とプロセスの整理を進めました。
富士通株式会社の事業モデル「Uvance」のデータ活用から業務実行までを一体化したオールインワンオペレーションプラットフォーム「Fujitsu Data Intelligence PaaS」を活用し、約4か月でアプリケーションを構築しています。
「Fujitsu Data Intelligence PaaS」は、AIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」、データ連携・トレーサビリティを実現する「Fujitsu Track and Trust」、そして「Palantir Foundry」や「Microsoft Azure」などのデータ基盤から構成されています。© Palantir Technologies Inc.
AI人事異動「お善立て」の3つの特長
アプリケーションの主な特長は、以下の3点です。
- 社内の複数システムとExcelの人事データを一元管理
- 数理最適化モデルによる配置案作成支援
- 人事担当者との対話を通じた判断を支援するAIチャット機能
数理最適化モデルでは、所属年数や希望部署などの個人データ、スキル・職歴、評価・実績、事業所バランスといった多様な項目を入力条件として活用します。
膨大な組み合わせの中から各種条件を満たす配置案を導き出すことで、異動案作成の工数を約98%削減しました。
AIチャット機能では、人事担当者が日常的に重視してきた判断の観点を整理した上で、活用できる設計となっています。数理最適化モデルで作成された案に対し、定量データだけでは配慮しきれない従業員のキャリア志向や配置による影響について、対話を通じて示唆を得ながら最終判断を行います。
AI人事異動「お善立て」概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| アプリケーション名 | AI人事異動「お善立て」 |
| 取り組み企業 | トラスコ中山株式会社・富士通株式会社 |
| 活用プラットフォーム | Fujitsu Data Intelligence PaaS |
| 構築期間 | 約4か月 |
| 工数削減率 | 約98%削減 |
| 対象規模 | 1回の異動でおよそ100人規模 |
| 組み合わせ数 | 10の158乗通り |
| 活用開始 | 2026年4月の人事異動から |
| トラスコ中山所在地 | 東京都港区 |
| 代表取締役社長 | 中山 哲也氏 |
trends編集部の一言
1回の異動で100人規模の配置を検討し、その組み合わせが10の158乗通りに達するという数字は、人事業務が抱える構造的な複雑さを改めて示しています。マーケティング業界の文脈に置き換えると、複数条件を絡めた意思決定の負荷は業種横断で語られてきたテーマであり、数理最適化モデルによって約98%の工数削減を実現したアプローチは、業界全体の意思決定プロセス転換を象徴する動きと捉えられます。
FDE(Forward Deployed Engineer)が、現場に入り込み暗黙知を体系化しながら約4か月で実装まで持ち込んだプロセスは、共創型アプローチの一つの型として注目されます。マーケティング業界においても、複数データソースをまたいだ意思決定の高速化は長年の課題であり、AIと人の役割分担を再設計するこうした動きは今後さらに広がっていくのではないでしょうか。
References
- ^ PR TIMES. 「トラスコ中山と富士通、データとAIを活用し、人事異動の意思決定プロセスを高速化 | トラスコ中山株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000093.000001577.html, (参照 26-05-21).
