配属先が決まっていない新人に、何を教えるか。
コンサルティング企業が選んだ「生成AI活用」と「プロジェクトマネジメント」の二軸
継続実施していたPM研修に、今年から生成AI活用研修が加わった。社会人経験がなく、配属先も未定の新入社員3名に向けて、どのような設計がなされたのか。研修を担当したコードキャンプの2名に話を聞きました。
この記事の要点
- コンサルティング企業が継続実施のPM研修に加え、今年から新入社員向けの生成AI活用研修を導入した
- 社会人経験なし・配属先が未定の新人にも業種問わず通用する、汎用スキルを軸に据えた
- 生成AI活用研修ではAIネイティブの若手に対し、生成AIの「体系的理解」と「判断は人間」という姿勢を養うことに留意した。さらにAIエージェント等を体感することで、AIが実現できる世界を感じてもらうことを目指した
- PM研修ではプロジェクトの進め方の全体感とマネージャー視座を養うことを目指して実施した。今後はAIとPMの連動が展望だ
| 業種 | コンサルティング |
|---|---|
| 研修テーマ |
新入社員向け 生成AI活用研修 + プロジェクトマネジメント(PM)研修 ※「独立二軸」で設計 |
| 対象・人数 | 新入社員 3名(配属先未定) |
| 研修形態 | カスタマイズ研修(集合研修) |
| 実施時期 | 2026年5月 |
| 主な狙い | 業種・配属先を問わず通用する汎用スキルの獲得と、新人を起点とした組織変革 |
今回話を聞かせてくれたのは
教務事業部
教務 部長
ラーニングソリューション事業部
営業・運営担当
取材にご協力いただいたコードキャンプのお二人
課題と、研修に至るまでの背景
導入前の課題
AIの活用能力は付加価値ではなく、コンサルタントとして当たり前に持つべき業務能力になる。その認識が出発点となった。
本事例のコンサルティング企業の新人研修は、前年から続くPM研修に、今年新たに生成AI研修が加わる形で企画された。PM研修は継続案件だったが、AI研修は「今年から」の要望だ。
背景には明確な危機感があった。営業を担当した鈴木さんは、こう振り返る。
AI技術がこれだけ急速に普及してくると、AIの活用能力はもはや付加価値ではなく、コンサルタントとして当たり前に持っておくべき業務能力(標準装備)になっていくと思っています。お客様とフラットに新人研修を考えるなかで、人材育成に関する課題をいただいたことが出発点でした。
課題は「AIを使いこなす」という一点に集約されつつも、それを新人が担うのか、既存社員が担うのか──対象の設定そのものが、検討の出発点になった。
研修実施の背景
業務をまだ知らないがゆえの新人の「フラットな視点」に着目。スキル習得にとどまらず、組織変革の起点としての新人研修という位置づけ。
コンサルティング業界はトレンドへのキャッチアップが早く、生成AI研修へのニーズは各所で高まっている。一方で既存のベテラン層は、日々の業務に追われ生成AIを使いこなしきれていない・既存の業務のやり方に違和感をもつこともなくそのまま進めている現実もある。
そこで同社が着目したのが、業務をまだ知らないがゆえの新人の「フラットな視点」だった。鈴木さんは、先方の狙いをこう伝える。
既存のやり方に対して「これは今も最適な方法なのか」「もっと効率化できる余地はないか」と、臆せず建設的に問いを立てられる1年目に育てたい、という思いがありました。
新技術に敏感な若手が入ることで、既存プレイヤー側にも刺激とシナジーを生む。単なるスキル習得にとどまらない、組織変革の起点としての新人研修という位置づけだ。
① スキル習得
生成AI活用とプロジェクトマネジメント、双方の実務スキルをキャリアの出発点である新人段階で身につける。
② 組織変革の起点
フラットな視点を持つ新人が「これは本当に最適か」と問いを立てることで、既存メンバー側にも刺激とシナジーを生む。
研修をどう設計したか
なぜ「独立二軸」だったのか
AIとPMをあえて掛け合わせず、それぞれ独立したゴールで設計。配属先が未定だったため、特定業務に寄せず汎用スキルを押さえる方針をとった。
設計上の判断は、AIとPMを「掛け合わせない」ことだった。
この時代だからこそ、キャリアの出発点である新人研修の段階で、生成AIを当たり前に使いこなす力を身につけてほしいと考えています。
これまでの業務慣習に染まりきっていない新入社員だからこそ、「この作業はAIで効率化できないか」「今のやり方が本当に最適なのか」と、臆せず問いを立て、組織に前向きな変化を起こせる存在になってほしい、という先方の狙いがありました。
カスタマイズ研修でありながら、受講者3名の配属先が未定だったため、特定業務に寄せず「どのプロジェクトでも必要になる汎用スキル」を押さえる方針をとった。二つの軸は、それぞれ独立したゴールを持って設計されている。
| 項目 | 軸① 生成AI活用 | 軸② プロジェクトマネジメント |
|---|---|---|
| ゴール | 世界を広げる(AIでできることの実感) | 全体感の把握 |
| 重点 | 体系的な理解/社会人としてのリスク理解/「判断は人間」という姿勢 | 要件定義〜保守運用の全体像/各プロセスでのマネージャー視座 |
| 育てる力 | ノンエンジニアでも「使う」ではなく「活用」できる実装力 | 要件や設計の普遍的なポイントの理解 |
生成AI研修の設計意図
ゴールは「世界を広げる」こと。体系的な理解と社会人としてのリスク理解、そして「最後は人間が判断する」という姿勢を重視した。
生成AIパートのゴールは、一言でいえば「世界を広げる」ことだった。バイブコーディングやAIエージェントを手触りで体験し、「こんなことができるのか」を実感してもらう。社内業務はもちろん、コンサルタントとして顧客へ提案する場面でも活かせる状態を目指した。
ただし、新人がこれまで学生として触れてきたAIと、社会人として顧客のデータを扱うAIは、そもそも前提が違う。
学生時代の使い方と、社会人になって顧客のデータを使う使い方では、扱うデータの質が変わる。だからこそ、社会人としてのリスクを知った上で活用することを、体系的に理解してほしかった。
もう一つの軸が、対象を選ばない実装力だ。バイブコーディングやAIエージェントは、もはやエンジニアだけの世界ではない。
コンサルだから触らない、という時代ではもうない。自分で作ってみて、日々の業務に活用できるものになる。
背景には、ノンエンジニアでも実装できる時代の到来がある。従来は「作ること」自体が目的化し、開発する側と依頼する側の間に乖離が生まれ、システムがレガシー化する一因にもなっていた。提案する側が開発イメージを持てるようになれば、その差分は縮められる。だからこそ、目指すのは「使う」ではなく「活用」だと深瀬さんは言う。
大事なのは“使う”ではなく“活用”。どれだけ実業務で使えるものになるか、です。
そのうえで最も強調されたのが、AIとの向き合い方だ。かつては「仕事の下書きを作るツール」「壁打ち役」と説明していたが、精度が上がった今は“AIパートナー”と呼べる水準にある。プロンプトエンジニアリングでさえ「もはや」と語られる変化の速さのなかで、それでも変わらない原理原則がある。
いくらAIがすごくても、最後は人間が判断しなければいけない。本質は人間です。
「では自分たちは人間として、どこの価値を高めるのか」──この問いを、ディスカッションベースで扱った。
PM研修の設計意図
ゴールは「全体感の把握」。プロセスの理解にとどまらず、各プロセスでマネージャーがどのような視座を持っているかを理解することを狙った。
PMパートのゴールは「全体感の把握」だ。コンサル業界では、経験の浅いうちからプロジェクトへ投入されることも珍しくない。まずは全体像を掴めること、そしてプロセスの理解にとどまらず、各プロセスでマネージャーがどのような視座を持っているかを理解することを狙った。
メンバーとして入った時も、マネージャーの視座・視点を持っていてほしい。今マネージャーが指示した内容は、何を気にして、何を狙っているのか。それを考えて行動に移してほしい。
設計は発注者目線で組まれ、コンサルタントやSEの上流工程に関わる人材を想定している。要件定義・設計・開発・テスト・保守運用といった全体像を押さえる構成だ。ここにも、深瀬さん自身のSE・コンサル経験に根ざした「目的思考」が通底している。
開発を進めていると構築すること自体が目的になりがち。そこをコンサルの“目的思考”で捉え直すことは意識しました。
各プロセスでの成果物のフォーマットは、企業ごとに合わせる案はよく話として挙がる。だが、と深瀬さんは続ける。
要件定義や基本設計・詳細設計など、各プロセスでの成果物に書くべきことは原理原則として決まっている。フォーマットが違っても、大事なことは変わりません。
プロジェクトごとにフォーマットは異なる。だからこそ、特定の型に依存させるのではなく、求められるものが変わっても要件や設計をまとめきる「普遍的なポイントの理解」を養うことに主眼を置いた。フォーマット非依存は、手抜きではなく設計思想である。
他社・他業種にも通じる設計思想
「今回向けにカスタマイズした」というより、業種や配属先が変わっても通用する原理原則として設計されている。
今回の設計で一貫しているのは、「特定の一社のためだけの研修にしない」という姿勢だ。深瀬さんは、目的思考について問われた際にこう前置きした。
これはコンサルに限った話ではありません。今回向けにカスタマイズしたというより、普遍的なものとして設計しました。
研修設計のポイントはいずれも、業種や配属先が変わっても通用する原理原則だ。裏を返せば、この事例で語られた設計の勘所は、コンサルティング業界に限らず、自社の新人育成を考える多くの企業にそのまま応用できる。
なお本件はCodeCampの「カスタマイズ研修」として実施したものだが、CodeCampには公開型・法人向けの区分に加え、パッケージ研修、講義形式・オンライン・動画教材、学習管理ツール「CCI」との連携など、目的や体制に応じて選べる複数の形態がある。今回のように企業の課題へ合わせて設計するだけでなく、汎用的なパッケージから始める選び方も可能だ。
実施と、その後
実施プロセス
生成AIパートは「本質は人間」という前提をディスカッション形式で扱い、PMパートは常にマネージャーの視点から進めた。
研修は5月に実施された。
生成AIパートでは、基礎学習の段階から「活用の姿勢」を重視した。AIの位置づけの変化を踏まえつつ、「本質は人間」という前提を、受講者自身が考えるディスカッション形式で扱った。PMパートでは、プロセスの手順を追うだけでなく、常にマネージャーの視点から「何を気にすべきか」を意識させる進め方をとった。
受講者の変化
基礎は既知でも「体系的に知れて良かった」という声。AIエージェントやバイブコーディングの体験では「世界が広がった」という手応えがあった。
生成AIネイティブとも言える新人は、全員が生成AIを日常的に使いこなしていた。「生成AIは全然使えますよ」というスタンスであり、反応は二極化した。
- 「基礎(プロンプトエンジニアリングや基本的な活用方法)はすでに知っていたので、この部分は物足りなかった」という声。
- 一方で、「感覚的に使えていたことを、改めて体系的に知れて良かった」という声。
- 名前は耳にしていても触れていなかったAIエージェントやバイブコーディングは、実際に手を動かして体験したことで「世界が広がった」という手応え。
- 「この業務でこう使ってよい」と会社として示すすり合わせに、知っている・知っていないに関わらず価値を感じたという声。
基礎そのものは既知でも、感覚的に使えていたことを、成り立ちやリスク、原理原則まで含めて体系立てて理解し直した経験は、今後の実務でこそ活きる──提供側はそう捉えている。さらに、AIエージェントやバイブコーディングを実際に理解し、手を動かして体験したことで「世界が広がった」という手応えは、今回の研修の確かな成果と言える。
使い方を知っている受講者にとっても、「この業務でこう使ってよい」と会社として示すすり合わせは、知っている・知っていないに関わらず重要な意味を持った。
成果
「使う」から「活用」へ視点を引き上げる基盤づくりとして機能。PM研修では配属先を問わず通用する軸を提供できた。
学生時代のAIの使い方と、顧客データを扱う社会人のそれとでは、扱うデータの質もリスクも異なる。今回の研修は、その差を体系的に理解させ、「使う」から「活用」へと視点を引き上げる基盤づくりとして機能した。PM研修では、発注者目線と全体感、マネージャー視座という、配属先を問わず通用する軸を提供できた。
今後の展望
今回あえて分けたAIとPM。両者が連動すれば、より実践的な研修になるという認識が提供側にある。
今回あえて分けたAIとPMだが、両者が“連動”すればより実践的な研修になる、という認識は提供側にある。AIを活用した構築や、その導入時のマネジメント(PMの中でAIをどう活用するか)へと発展させていきたい。
配属先を問わず通用する、新人育成を。
コードキャンプでは企業の課題や育成目標に合わせて、新入社員をはじめ、中途社員や既存社員に対して、プログラミングや生成AI活用・DX人材育成・プロジェクトマネジメントなど、実務に直結する研修を設計・提供しています。カスタマイズ研修から汎用パッケージまで、目的や体制に応じてご提案します。

















