『AIエージェント導入を任されたら読む本』の著者に聞く、7つの軸で考えるAIエージェント導入
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AIエージェント導入を初めて任されたとき、個別の技術の名前を覚えるだけでは、自社に必要な構成や導入の進め方を判断しにくいものです。対象業務と成功条件を先に整理し、AIと人の分担、PoCでの評価、本番の運用までを一つの仕事として捉えると、検討すべき点が見えてきます。
この記事は、書籍『AIエージェント導入を任されたら読む本』の著者で、コードキャンプのAI研修統括を務める志賀琢也さんへの前編・後編のインタビューをもとにしています。仕組みの判断から導入を支える体制と学習までをまとめたので、AIエージェント導入の進め方について調べている方は、ぜひ参考にしてください。
書籍紹介漫画を読む(カラー版・全6ページ)
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目次
AIエージェント導入の全体像を理解する
AIエージェントは、目標に向けて次の行動をAIが判断し、ツールを使って作業を進める仕組みです。そのため導入する側は、AIにどこまで判断を任せ、どこを人や既存のシステムが受け持つかを決める必要があります。
書籍が示す判断の地図をつかむ
AIエージェントを導入するには、特定のフレームワークの使い方に加えて、構成要素やAIと人とシステムの分担、評価、安全な運用まで横断して理解する必要があります。ところが、それらをまとめて学べる入門的な情報は、まだ十分ではありません。
そこで書籍では、AIエージェントを一つのシステムとして捉え、基盤の理解から最小実装、典型的な構成、本番運用までを段階的に扱っているのです。
志賀さんは、書籍が目指すのはシステム全体を自分で作れるようになることではなく、次の三つを判断できるようになることだと話します。
| 判断の観点 | 書籍を読んで考えること |
|---|---|
| できること | AIエージェントで何ができるか |
| 限界とリスク | どこに限界やリスクがあるか |
| 適用する業務 | 自社のどの業務へ適用すべきか |
この三つを判断できれば、変化の速いAIエージェントの分野でも、自社にとっての次の一歩を考えられます。つまり書籍は、そのための地図の役割を果たすのです。
三つの立場に必要な判断を知る
書籍が想定する読者は、企画や要件定義を担う非エンジニア、投資判断や体制づくり、ベンダー選定に関わる意思決定者、これから実装に携わるエンジニアの三者です。ただし、同じ仕組みを理解していても、立場によって、判断することは異なります。
なかでも書籍が中心に置くのは、技術者やベンダーと対話しながら、自社の業務要件を整理する立場の方です。この方は、自分でコードを書かなくても、どの仕事をAIに任せるかを自分の言葉で伝える役割を担います。
業務で使い続ける状態を目指す
そうした読者に向けて、書籍がゴールの一つとしているのは、次の三つの境界を自分の言葉で説明できるようになることです。
- 固定の手順にする範囲
- AIに判断を任せる範囲
- 人の承認を置く位置
さらに、もう一つ目指したいのが、動く試作品を作って終わりにせず、業務で使い続けられる状態まで進めることです。そのためには、成果物を誰が確認し、次の仕事へどうつなげるかまで具体的に決めておきます。
新しい技術を三つの問いで見極める
「新しいAIの技術が次々に出てくるけれど、全部追いかけないといけないのでは?」
と、焦っている方もいるかもしれません。
確かに、AIエージェントの分野では、新しいモデルやサービス、フレームワークがこれからも次々に登場するはずです。しかし、すべてを追いかけるより、自社に必要なものを見分けられる土台を持つほうが、変化に振り回されずに済みます。
そこで役立つのが、新しい技術に出会ったときに使う、次の三つの問いです。
- これは何をするものなのか
- 自社に必要なのか
- 既存の仕組みと何が違うのか
また、志賀さんは、AIに関する情報を整理するための「本棚」を持っておいてほしいと話します。ニュースが流れたときに「これはこの棚にしまえばいい」と分かれば、情報の波に埋もれずに必要な情報を選び取れるからです。
AIエージェント導入の対象業務を見極める
対象業務が決まらないまま構成だけを選ぶと、何ができれば成功かを決めにくくなります。だからこそ、まず改善したい仕事を具体的にし、そのあとで仕事に合う任せ方を考えます。
対象業務と改善したい目的を決める
最初から「LangGraphを使おう」「MCPを導入しよう」と技術を決めるのが、いつも正解とは限りません。対象業務と成功条件があいまいなまま作るものだけが先に決まると、かえって遠回りになりがちです。
もちろん、早めに試作品を作ること自体は、良い進め方です。ただし、その場合も、何のために、誰のために、何を改善するのかをはっきりさせておきます。
商談準備を例に取ると、改善したい目的によって、設計は変わるものです。そこで、次の問いに順に答えていくと、必要な技術と評価の方法が見えてきます。
| 考えること | 問い |
|---|---|
| 改善したい目的 | 時間、調査漏れ、提案の質のどこを改善したいか |
| 必要な情報 | どの情報を集めるか |
| 成果物 | 何を出せば担当者の役に立つか |
| 確認する人 | 誰が何を確認すると次の行動へ進めるか |
| 成功条件 | 何が改善すれば役立ったと判断できるか |
ここで気をつけたいのは、資料を自動で作っても、担当者が毎回すべてを調べ直すなら、期待した効果は得られないという点です。つまり改善を考える範囲は、AIの処理だけではなく、人の確認や修正まで含めた仕事全体なのです。
業務に合う三つの構成を比べる
志賀さんは、目指すべきなのは「AIエージェント化すること」そのものではなく、業務に合った構成を選ぶことだと話します。
“AIは使うけれど、手順は人間が完全に決める”のがワークフロー、“手順そのものをAIが考える”のがAIエージェントです。
三つの構成の違いを、以下の表で比べます。
| 構成 | 選ぶ理由 | 具体的な考え方 |
|---|---|---|
| ワークフロー | 処理の段取りを事前に決められる | 規程を検索し、権限を確認し、根拠付きで回答する固定手順など |
| AIエージェント | 状況に応じて手順を変える必要がある | 相手や調査結果によって次の情報源や調査順序を判断する |
| マルチエージェント | 独立した専門の観点を分担する理由がある | 複数のエージェントの役割を分け、結果を統合する |
「マルチエージェントは複数のLLMを使うから、一番品質が高いのではないか?」
と、思った方がいるかもしれません。
結論から言うと、マルチエージェントにすれば、品質が上がるとは限りません。処理の重複や結果の統合、時間と費用の増加に見合うかを確かめてから選びます。
つまり、ワークフローよりAIエージェント、AIエージェントよりマルチエージェントのほうが優れている、というわけではありません。
AIと人とコードの担当を分ける
また、AIにある程度任せる場合でも、最終判断やレビューなど、人が入る箇所は分けておきます。さらに、権限の確認や正確な計算は、プログラムのコードに任せる設計もできます。
ただし、人による承認と、コードによる権限の確認は役割が違います。そのため、実際の業務では、それぞれをどの工程に置くかを決めておきます。
依頼する側も構成を説明する
こうした仕組みの見極めは、エンジニアだけの仕事ではありません。依頼する側も、AIで何ができるかを理解し、どの部分にどの構成が合いそうか当たりをつけておきます。
具体的には、依頼する側が次の三つを整理して伝えます。
- 固定できる手順
- 状況によって変化する判断
- 人が確認する箇所
この三つを整理しておけば、製品名を指定しなくても、エンジニアやベンダーに業務の要望を具体的に伝えられるはずです。
AIエージェント導入の要件を7つの軸で整理する
対象業務が見えたら、次はAIに何を求めるかを整理します。このとき、七つの軸を共通の問いにすると、業務を知る人と技術を知る人が同じ論点で話せます。
七つの軸で検討の抜けを防ぐ
書籍の七つの軸は、使う技術を決める前に、業務上の判断や人とAIの分担、扱う情報、評価基準を整理するためのものです。
七つの軸の名前と、検討する問いの例を以下にまとめました。
| 軸 | 検討する問いの例 |
|---|---|
| 利用者と業務目的 | 誰が、どの仕事の改善に使うか |
| 制御主体 | 手順を人が固定するか、AIが判断するか |
| 人の介在 | どこで確認、承認、引き継ぎを行うか |
| 情報要件 | どの情報を参照するか |
| 外部システム操作と権限 | どんな操作を許可し、どの権限で行うか |
| 利用形態と会話の継続 | どんな形で利用し、会話をどこまで継続するか |
| 出力・成功条件・評価 | 何を出し、何をもって成功と判断するか |
表の問いは、自社の業務に置き換えて使います。たとえば商談準備なら、利用する担当者、集める情報、成果物、確認する人を当てはめるイメージです。
関係者と分担して仮置きする
志賀さんは、七つの軸は導入担当者が一人で埋める宿題ではなく、関係者の認識をそろえる道具だと話します。その最初の一歩は、業務担当者と一緒に「利用者と業務目的」と「出力・成功条件・評価」を仮置きすることです。
次に、エンジニアやデータ・システムの管理者と、必要な情報や操作、利用方法を確かめます。そのうえでAIと人の分担を具体的に決め、必要に応じてセキュリティや法務の担当者にも加わってもらいます。
なお、最初の仮置きで答えが完成している必要はありません。業務側の期待と技術側が確かめた制約を同じ軸の上で突き合わせながら、AIに任せる範囲を少しずつ固めていきます。
PoCの前に共有事項と未決事項を残す
PoC(概念実証)は、本番導入の前に、構想が実現できるか、期待する効果が出るかを限られた範囲で試す検証です。
「PoCを始める前に、七つの軸を全部決めておかないといけないのでは?」
と、不安に思う方もいるかもしれません。
実は、その必要はありません。ただし、次の四つだけは関係者と共有しておきます。
- 対象範囲
- 使ってよいデータや権限
- 成功条件
- 検証する不確実性
まだ決まっていない事項についても、何が未決かに加えて、誰がいつ確認するかまで記録しておきます。そうすれば、共有済みの条件と、検証しながら確かめる点を区別できるのです。
さらに、この整理は外部ベンダーに出すRFP(提案依頼書)にも使えます。共通の条件を示しておけば、ベンダーごとの提案を同じ物差しで比べられるからです。
セキュリティと法務も全体像を共有する
志賀さんは、何を実現するためにどこを守るのかを全体像として理解すると、「攻めのセキュリティ・法務」が実現できると話します。
- 何を実現するために導入するか
- その目的のために、どの範囲を守るか
- 仕組みの勘所を、関係する担当者と共有できているか
そのためには、導入担当者が理解して伝えるだけではなく、必要に応じてセキュリティや法務の担当者にも書籍を共有すると効果的です。仕組みの勘所がそろえば、同じ前提で要件を検討しやすくなります。
AIエージェント導入のPoCで効果を確かめる
志賀さんは、PoCでは回答の精度だけではなく、人の確認まで含めて業務が改善するかを評価すると話します。さらに、想定どおりに進まない場面への対応も、確かめる対象に入ります。
成果物と人の手間を合わせて測る
改善したい対象は、人の確認も含めた仕事全体です。そのためPoCでは、成果物の品質と人の手間を、次の観点で合わせて測ります。
| 評価する観点 | 確かめる内容 |
|---|---|
| 成果物の品質 | 情報の正しさ、出典、欠かせない観点の抜け |
| 人の手間 | 担当者の確認・修正にかかる時間 |
| 処理時間 | 成果物を得るまでにかかる時間 |
| 費用 | 成果物を得るためにかかる費用 |
なぜなら、文章が自然に見えても、その内容を仕事で使えるとは限らないからです。また、品質が高くても、使うまでに手間がかかれば、期待した効果は得られません。
通常時と異常時の振る舞いを試す
次に、PoCのテストには、代表的な通常のケースに加えて、情報がない、権限がない、外部システムが応答しないといった異常なケースも入れます。うまく答えられる場面だけを試すと、実際に使うときの問題を見落としかねないためです。
答えられないときに「未確認」と示したり、人へ引き継いだりできることも、品質の一部です。したがって、無理に答えを出させるのではなく、その場面に合った対応ができるかを確かめます。
指標が実際の業務改善につながるかを見る
成果を測る指標としては、KPI(重要業績評価指標)がよく使われます。ただし、KPIの数値が良くなっても、業務そのものが良くなっているとは限りません。
KPIが改善されても、本質的に業務が改善されていない——そんな“偽のKPI”を改善しても意味がない。
そこで、業務の改善につながる「真のKPI」かどうかは、損益につながる改善か、減った労力をどこに振り向けるかまで見て判断します。
本番へ進むか業務や構成を見直すかを判断する
こうした評価を踏まえ、本番へ進むかどうかは次の三つの観点で判断します。
| 判断の観点 | 確認すること |
|---|---|
| 対象業務の合格基準 | 業務ごとに決めた基準を満たすか |
| 重大な失敗 | 情報漏えいなどを全体の合格率とは別に判断する |
| 本番の運用条件 | 限られたPoCの結果だけで安全性を保証せず、継続利用の条件を確認する |
「PoCで期待した効果が出なかったら、その取り組みは失敗だったのでは?」
と、心配になる方もいるでしょう。
しかし、期待した効果が出ないと分かり、対象業務や構成を見直すと決めることも、PoCの立派な成果です。本番へ進むことだけが、PoCのゴールではありません。
AIエージェント導入でPoC後の本番化を進める
PoCの結果を受けて本番へ進むと決めたら、次は業務で使い続けるための準備に移ります。その準備の中心は、運用を続ける条件と、その担い手を決めることです。
運用の四本柱と担い手をそろえる
志賀さんは、PoCから本番へ踏み出せるかどうかは、この二つが決まっているかで分かれると話します。そのうえで書籍では、運用を続ける条件を次の四本柱にまとめています。
| 四本柱 | ここで考えること |
|---|---|
| 評価と観測性 | ログや指標から状態を把握し、品質を評価する |
| ガードレールとガバナンス | 出力や操作を安全な範囲へ制限し、管理する |
| コストとSLA | 費用と、サービス品質の水準に関する取り決めを扱う |
| 知識ベース運用 | 参照する情報を追加・更新し、品質を保つ |
実際の準備では、表の四本柱を自社の業務に当てはめ、それぞれの担当者と、問題が起きたときの対応手順まで決めておかなければなりません。
モデルと情報の変化を観測して改善する
志賀さんは、PoCは「ある時点のスナップショット」として、うまくいったかを見るものだと話します。一方の本番では、変化の大きい環境の中で、これから先も運用を続ける方法を考えなければなりません。
たとえばモデルが変わると、以前は適切だったプロンプトが、半年後には適切でなくなることもあります。だからこそ、こうした変化(ドリフト)を観測し、改善し続ける仕組みを用意しておくのです。
更新と通知と品質確認の担当を決める
また、本番の運用では、社内規程の改定、検索やツール呼び出しの失敗、モデルの変更といった出来事に備えます。具体的には、出来事ごとに、誰がどの手順で対応するかを決めておきます。
このとき、担当は役職で一律に割り当てず、その業務の情報やシステムを実際に扱う責任者から選びます。部門ごとの大まかな役割とは別に、出来事ごとの対応を決めておくのです。
対象を絞って監視しながら広げる
「本番化するなら、全社に一気に広げたほうが早く効果が出るのでは?」
と、考える方もいるかもしれません。
しかし、本番化は一度に全面展開する必要はありません。次の順で、対象を少しずつ広げていきます。
- 監視、人への引き継ぎ、停止・切り戻しの手段を用意する
- 対象者と業務範囲を限定して運用する
- 監視しながら継続を判断し、対象を段階的に広げる
なお、切り戻しとは、問題が起きたときに変更前の状態へ戻すことです。監視と切り戻しの手段を先に用意しておくからこそ、対象を段階的に広げられるのです。
AIエージェント導入の体制を整えて実践する
ここまで見てきた業務選定から本番運用までを支えるのが、体制と人材、そして実践を通じた学び方です。この章では、その三つを順に整理します。
各立場の意思決定をつなぐ
まず体制づくりでは、役職名よりも、誰が何を判断し、誰が運用を担うかをはっきりさせます。四者の分担は、次のとおりです。
| 立場 | 担うこと |
|---|---|
| 業務部門 | 改善する仕事と、成果物が使えるかどうかの基準を示す |
| エンジニア | 構成、制約、検証、運用方法を具体化する |
| 経営層 | 投資の優先順位、許容するリスク、必要な体制を判断する |
| 導入担当者 | 論点と未決事項を整理し、関係者の判断をつなぐ |
このうち導入担当者は、各部門の判断を代わりに引き受けるのではなく、判断どうしをつなぐ立場です。志賀さんは、その役割を次のように話します。
AI担当者に求められるのは、各ステークホルダーの立場や意見をつないで、それをAIの言葉に落とし込んでいく“コーディネーター”的な役割です。
経営層が現場のメリットまで具体化する
志賀さんは、導入のメリットを最初に受けるのは経営層なので、経営層が自ら推進を主導するのが望ましいと話します。
さらに経営層は、現場の一人ひとりにどんなメリットがあるかまで具体的に考えます。そこまで落とし込まなければ、組織は動かないからです。
| 立場 | 具体化する内容 |
|---|---|
| 経営層 | 導入のメリットを踏まえた投資判断と体制づくり |
| 現場の一人ひとり | 仕事がどう良くなるか、それぞれのメリット |
「AIエージェントの導入を主導するなら、経営層もコードまで読めないといけないのでは?」
と、思った方もいるかもしれません。
その必要はありません。まずは経営層自身が仕組みを理解し、導入担当者にも書籍を読んでもらうところから始められます。
専門性を持ち業務と技術を翻訳する
こうした体制を支えるのが、業務と技術を幅広く理解したうえで、自分の専門性も持つジェネラリストです。用語をたくさん覚えるより、知識をつないで業務の判断に生かす力が問われます。
たとえばベクターDBは、情報をベクトルとして扱い、意味の近さで検索できる仕組みです。この仕組みを従来のデータベースとの違いから理解すると、業務でどう応用できるかを考えられます。
具体的には、「犬」と「ワンちゃん」のように表現が違っても、意味の近い情報を探せます。この特性が自社のどの仕事に役立つかまで考えることが、業務と技術をつなぐ「翻訳」です。
部門を越えて結果を次の設計に戻す
こうした知識が幅広く求められるため、機能別の縦割りの組織よりも、フラットで横のつながりがある組織のほうが機能しやすくなります。そこで、自社でも部門を越えて同じ業務を話し合える場があるかを見直してみてください。
そのうえで企業が育てたいのは、業務と技術をつなぎ、AIへの任せ方を設計し、結果から改善できる人材です。うまくいかなかったときも、その理由を次の設計に戻せば、任せ方を見直せます。
一件の仕事から自社の導入案を作る
明日ひとつ取り組むなら、現場の担当者と、実際にあった仕事を一件だけ振り返ります。そのうえで、図20の欄に沿って一枚にまとめ、AIに任せたい範囲と、ここが改善すれば役立つという条件を一つ置きます。
書き出したメモをエンジニアや導入パートナーに見せれば、自社の業務に沿った具体的な検討を始められるのです。
その先は、自社の業務に七つの軸を当てはめ、業務設計や導入計画に生かします。外部に依頼する場合は提案依頼書(RFP)を作り、エンジニアなら実際の構築に進むのも次の一歩です。
なお、書籍は全章を読み終えてから使い始める必要はありません。一つの業務を選び、必要な章に戻りながら導入案を作っていけます。
また、自分がよく知る業務と技術の知識をつなぐ練習は、早めに始めるほど力がつきます。一つの業務で身につけた任せ方の考え方は、ほかの業務にも応用できるのです。
書籍と二つの研修を使い分ける
書籍で全体像と判断軸をつかみ、研修の演習で知識を実践に近づければ、理解から実装へ進みやすくなります。そのため研修を選ぶときは、実際の業務を題材に設計と評価を経験できるかを確かめましょう。
書籍と二つの研修の役割に、研修の時間と前提を加えて、以下にまとめました。
| 学習手段 | 役割と内容 | 時間 | 前提 |
|---|---|---|---|
| 書籍 | 仕組みの全体像と、業務への適用を考える判断軸を学ぶ | - | - |
| AIエージェント速習研修 | 書籍が扱う範囲を凝縮し、ノーコード(Dify)でエージェントを動かして手触りを得る | 事前学習+8時間(4時間×2日) | 前提知識の記載なし |
| AIエージェント構築研修 | LangChain・LangGraph中心に、実装に必要な技術を学ぶ | 60時間〜 | Python基礎が前提 |
たとえば、周囲にも同じ知識を持ってほしいのに、書籍を読んでもらうのが難しい場合は、速習研修を受けてもらうのがスムーズです。速習研修は、文章より手を動かして学ぶほうが入りやすい方にも向いています。
一方、構築研修は、概要を理解したうえで、実際に作る力を身につけたいエンジニアに向いています。実装が必要な案件を控え、開発チームのスキルを高めたい場合にも選べる研修です。
AIエージェント導入の進め方のまとめ
最後に、この記事のポイントを5行で振り返ります。あわせて、図20の一枚シートを使った、明日やることを示します。
この記事のポイント
- 技術より先に、対象業務と「何が良くなれば成功か」を決める
- ワークフロー・AIエージェント・マルチエージェントは、業務に合わせて選ぶ
- 七つの軸を関係者と仮置きし、PoCの前に範囲・データと権限・成功条件・検証する点を共有する
- PoCは人の確認まで含めて業務が良くなるかで判断し、本番は運用の条件と担い手をセットで決める
- 経営層が推進し、導入担当者が各立場の判断をつなぐ
明日やること(図20の一枚シート)
- 現場の担当者と、実際にあった仕事を一件だけ選ぶ
- 図20の一枚シートに、何を受け取ったか・何を調べたか・どこで判断したか・何を出したか・どこで時間がかかったか・どこを間違えると困るか・AIに任せたい範囲・何が改善すれば役立つかを書き出す
- 書き出したシートをエンジニアや導入パートナーに見せ、具体的な検討を始める

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