銀行が特殊詐欺の被害金を追跡する警察庁の枠組みに参画、不正対策担当者による照会回答の迅速化をめざす
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特殊詐欺の被害金は複数の金融機関の口座を経由して移されることがあり、銀行には警察の照会に素早く応じて追跡を支える体制が問われています。警察庁と銀行が被害金の追跡や口座凍結、被害回復を進める官民協働型枠組みには、2026年9月30日に参画を発表する銀行が相次ぎました。
この記事では、特殊詐欺の被害金を追跡する官民協働型枠組みの流れに加え、参画した銀行ごとの説明や暗号資産詐欺の送金経路調査、自社で確かめておきたい観点まで詳しく解説します。金融機関や暗号資産の分野で特殊詐欺対策を担う不正対策担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の要点
- この記事の材料:発表4件
- 発表主体:株式会社TP、銀行株式会社 ほか1件
- 出典の最終掲載:2026.09.30
SOURCESこの記事がまとめた発表
目次
特殊詐欺の被害金を追跡する官民協働型枠組み
官民協働型枠組みは、特殊詐欺事件を認知した都道府県警察の照会に対し、参加金融機関が警察庁を介して被害金の資金移転先に係る情報を迅速に回答する取り組みです。ソニー銀行やauじぶん銀行、ドコモSMTBネット銀行は、迅速な捜査や被害拡大防止、被害金の回復を目的に警察庁と合意書を締結しました。[2][3][4]
合意書の正式名称は「特殊詐欺に係る被害金の追跡、凍結、回復に指向した官民協働型枠組みに関する合意書」で、照会から回答までの関係は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 照会する機関 | 事件を認知した都道府県警察 |
| 仲介する機関 | 警察庁 |
| 回答する機関 | 参加金融機関 |
| 回答する情報 | 被害金の資金移転先に係る情報 |
| めざす結果 | 追跡・口座凍結・被害金の回復 |
auじぶん銀行は、本枠組みが2026年6月1日から運用されていると説明しています。つまり、ソニー銀行とauじぶん銀行が示す10月1日の運用開始は、枠組みの始まりではなく、両行が参加金融機関として加わる時点を指します。
特殊詐欺の官民協働型枠組みに参画した銀行
官民協働型枠組みへの参画を発表した銀行は、目的や枠組みの概要を共通の言葉で説明しました。ただし、自行の対策との結びつけ方には違いがあり、各行の説明は以下のように整理できます。
- ソニー銀行が示す警察との連携強化
- auじぶん銀行が示す照会への情報管理
- ドコモSMTBネット銀行が示す未然防止との両立
警察への情報提供を軸に語る銀行もあれば、自行の不正検知と組み合わせて語る銀行もあります。自社の参画を説明するときは、どちらの文脈で位置づけるかを先に決めておくと整理しやすいです。
ソニー銀行が示す警察との連携強化
ソニー銀行は、警察庁と合意書を締結し、2026年10月1日(木)から官民協働型枠組みの運用を始めるとしています。背景には、特殊詐欺の被害額が急増し、複数の金融機関の口座を経由して被害金を移すなど手口が巧妙化している状況があると説明しました。[2]
ソニー銀行が枠組みを通じて取り組むとした内容は、以下の通りです。
- 警察への速やかな情報提供・連携
- 被害拡大の防止
- 犯罪捜査への協力
ソニー銀行は、枠組みを「今までにない取組」と表現し、警察庁および都道府県警察との連携を一層強化するとしています。照会に回答する部署から見ると、連携の相手は警察庁だけではなく、照会を出す都道府県警察にも及ぶ点を押さえておくと、窓口の整理に役立つはずです。
auじぶん銀行が示す照会への情報管理
auじぶん銀行も、2026年10月1日から参加金融機関として運用を始め、警察からの照会に迅速に情報を提供するとしています。回答は、関係法令および同行所定の手続に基づく適切な情報管理のもとで行うと明記しました。[3]
auじぶん銀行が連携強化の根拠として挙げた数値は、以下の通りです。
- 対象:特殊詐欺等の被害金交付形態
- 期間:2026年上半期
- 振込型の割合:全体の56.9%
auじぶん銀行は、警察庁が2026年9月30日に公表した資料を引き、振込型の多さを金融機関と警察の連携を強める理由に挙げています。さらに、迅速な回答と適切な情報管理を並べて掲げているため、照会対応の社内手続を見直すときの比較材料として使えます。
ドコモSMTBネット銀行が示す未然防止との両立
ドコモSMTBネット銀行は、2026年9月30日(水)に警察庁と合意書を締結し、新たに参画する金融機関として枠組みに加わりました。同行は、金融犯罪の未然防止に加えて、被害発生後の迅速な対応まで含めた対策を一層強化するとしています。[4]
ドコモSMTBネット銀行がこれまで進めてきた主な取組は、以下の通りです。表中のFIDOは、FIDOアライアンスが開発・標準化を進めるオンライン認証の国際標準規格を指します。
| 取組 | 内容 |
|---|---|
| 不正アクセス対策 | FIDOを活用した認証など |
| 不正取引の検知 | AIを活用した検知 |
| 金融犯罪のモニタリング | ネットワーク分析などを活用 |
| 関係機関との連携 | 警察をはじめとする機関 |
| 注意喚起・啓発 | 手口や対策を学べるページ |
また、ドコモSMTBネット銀行は、警察庁および金融庁からの要請に基づき、法人口座を含む預貯金口座の不正利用防止策を一層強化するとしています。犯罪を未然に防ぐ対策と被害発生後の拡大を防ぐ対応を両輪として語る構成は、参画を自社の対策全体に位置づける一例と言えるでしょう。
特殊詐欺とは別に見る暗号資産詐欺の追跡調査
暗号資産で送らせる詐欺の被害金は、銀行口座の照会ではなく、ブロックチェーン上の送金記録からたどる方法があります。日本仮想通貨被害協会が提供する送金経路の追跡調査について、以下の観点で整理しました。
- 暗号資産送信型詐欺の被害規模
- 送金経路の追跡調査の対象範囲
官民協働型枠組みは警察と金融機関の情報連携ですが、追跡調査は被害者が民間団体に依頼する有料サービスです。両者は依頼する主体も情報の流れも異なるため、同じ「追跡」でも分けて理解しておく必要があります。
暗号資産送信型詐欺の被害規模
日本仮想通貨被害協会は、警察庁の令和7年確定値を引き、被害金を暗号資産で送らせる「暗号資産送信型」の詐欺が急増していると説明しています。協会によると、SNS型投資詐欺とSNS型ロマンス詐欺を合わせた暗号資産送信型の被害は、年間4,075件・463.2億円にのぼりました。[1]
協会が示す暗号資産送信型の内訳は、以下の通りです。
| 類型 | 件数 | 被害額 | 件数の前年比 |
|---|---|---|---|
| SNS型投資詐欺 | 1,898件 | 215.5億円 | +149.1% |
| SNS型ロマンス詐欺 | 2,177件 | 247.7億円 | +177.0% |
協会は、いずれも前年から件数・被害額ともに2倍以上に膨らんだとしています。被害金の交付形態には振込のほかに暗号資産の送信もあるため、交換業者と接点を持つ担当者は被害の規模を把握しておくと判断に役立ちます。
送金経路の追跡調査の対象範囲
協会の追跡調査は、トランザクションハッシュ(送金ごとの取引を示す値)と送金先アドレスをもとに、ブロックチェーン上の資金の移動を段階的にたどる調査です。報告書は送金1件につき11,980円(税込)で、警察・弁護士・暗号資産交換業者へそのまま提出できる書式としています。[1]
相談料は0円で成功報酬はなく、入金確認後の最短翌営業日にPDFで納品するとしています。着金先に届く前に追跡が止まった場合も、どこまで追えたかを記した報告書を渡したうえで全額を返金する設計です。
協会が申込前に明示している、調査で判明する事項と判明しない事項は、以下の通りです。
| 区分 | 事項 |
|---|---|
| 判明する | 資金移動経路の追跡 |
| 判明する | ミキサー・ブリッジ・DEX経由の有無 |
| 判明する | 着金先が交換業者かの推定 |
| 判明しない | 相手の氏名・住所・連絡先 |
| 判明しない | 資金返還の可否と金額 |
| 判明しない | 交換業者内部の資金移動 |
協会は、報告書を捜査機関へ相談するときの参考資料と位置づけ、資金の回収や返金そのものを約束するものではないとしています。また、国・地方公共団体や認定資金決済事業者協会ではないと明記し、「必ず取り戻せます」と持ちかける勧誘への注意も呼びかけました。
特殊詐欺の被害金追跡で不正対策担当者が確かめる点
官民協働型枠組みでは参加金融機関が警察庁を介して迅速に回答するため、自社の照会対応の手順と情報管理を先に確かめておく必要があります。auじぶん銀行が関係法令と所定の手続に基づく情報管理を明記したように、速さと手続を並べて説明する書き方は、社内規程を整える際の参考になる例です。[3]
自社に当てはめるときに不正対策担当者が確かめておきたい観点は、以下の通りです。
| 観点 | 確かめる内容 | 手がかり |
|---|---|---|
| 照会の経路 | 警察庁を介した回答の窓口 | 枠組みの概要 |
| 回答の速さ | 資金移転先情報の回答体制 | 参画各行の説明 |
| 情報管理 | 法令と社内手続の整合 | auじぶん銀行の明記事項 |
| 未然防止 | 不正検知との位置づけ | ドコモSMTBネット銀行の取組 |
| 法人口座 | 不正利用防止策の強化 | 警察庁・金融庁の要請 |
| 暗号資産経由 | 送金経路の調査範囲 | 協会が示す判明事項 |
| 二次被害 | 回収を確約する勧誘 | 協会の注意喚起 |
官民協働型枠組みは被害発生後の追跡と口座凍結に関わる仕組みのため、ドコモSMTBネット銀行のように未然防止の対策と組み合わせて考えると全体像を整理しやすくなります。暗号資産を経由する被害金については、民間の追跡調査で分かる範囲と分からない範囲を区別しておくと、被害者から報告書を示されたときの判断に役立ちます。
References
- ^ PR TIMES. 「暗号資産送信型の詐欺被害が年間4,075件・463億円。日本仮想通貨被害協会が送金経路の追跡調査を1件11,980円で2026年9月20日より提供開始」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000190369.html, (参照 26-10-01).
- ^ PR TIMES. 「特殊詐欺の被害金追跡などを目的とした「官民協働型枠組み」の運用開始について」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000916.000000157.html, (参照 26-10-01).
- ^ PR TIMES. 「特殊詐欺の被害金追跡等を目的とした警察庁との「官民協働型枠組み」の運用開始に ついて」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000551.000026860.html, (参照 26-10-01).
- ^ PR TIMES. 「ドコモSMTBネット銀行、警察庁と特殊詐欺対策で連携」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000630.000037968.html, (参照 26-10-01).








