EC支援企業がエージェンティックコマース対応を後押し、EC事業者は基盤・戦略・商品情報から選べる
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AIエージェントが商品の比較から購入までを代行するエージェンティックコマースに向けて、EC対応の始め方に迷っていないでしょうか。データ基盤や事業戦略、商品情報のどこから手を付けるかによって、相談する相手も支援の受け方も変わります。
この記事では、エージェンティックコマースに向けた受注・在庫データの接続や事業戦略の策定、商品情報の整理に加え、決済インフラの動きまで詳しく解説します。エージェンティックコマースへの備えをどこから始めるか比べたいEC事業者の方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の要点
- この記事の材料:発表4件
- 発表主体:NE株式会社、株式会社博報堂
- 出典の最終掲載:2026.10.08
SOURCESこの記事がまとめた発表
目次
エージェンティックコマースで増えるAIの売り場
エージェンティックコマースは、AIエージェントが生活者の希望や条件をもとに商品を検索・比較し、購入までを支援・代行する買い方です。GMO NIKKOが紹介したマッキンゼー・アンド・カンパニーの予測では、2030年までにAIエージェントが世界の消費者向け商取引の約3兆~5兆ドルを仲介する可能性があります。[4]
AIという新しい売り場が増えても、販売の主体はEC事業者のままだというのがNEの見方です。同社によると、GoogleもOpenAIも、価格や在庫、配送条件を含む商品情報を機械が読める形で提供することと、注文の受付から出荷までを担うことを事業者の側に求めています。[2]
AIの売り場を支える規格や国内外の取引の動きを、以下の表にまとめました。
| 時期 | 地域 | 主な動き |
|---|---|---|
| 2025年9月 | 米国 | OpenAIとStripeがACPを公開 |
| 2026年1月 | 米国 | GoogleがUCPを発表 |
| 2026年に入って | 日本 | カードブランドや金融機関が対応を発表 |
| 2026年5月 | 日本 | Mastercardが本番環境でエージェンティック取引 |
| 2026年9月 | 米国 | Metaが個人向けAIエージェントを発表 |
ACPは、OpenAIとStripeが公開した、AIを介した購入のためのオープンな規格です。UCPは、AIエージェントが商品検索から購入・決済までをEC事業者のシステムと連携して行うための規格で、Googleが提唱しています。
エージェンティックコマース対応のEC支援サービス
エージェンティックコマースへの備えを外部の支援で進める場合、出発点は受注・在庫データや事業戦略、商品情報に分かれます。主な支援は、以下の通りです。
- 受注・在庫データから備えるNEの支援
- 事業戦略から備える博報堂の支援
- 商品情報から備えるGMO NIKKOの支援
いずれの支援もAIエージェントが購買を代行する場面を想定していますが、扱う範囲や期間は支援ごとに異なります。
受注・在庫データから備えるNEの支援
NEは、SaaS型のECバックエンドシステム「ネクストエンジン」を通じて、6,700社を超えるEC事業者の受注や在庫、商品のデータを扱っています。日本では2026年5月にAPIを刷新し、6月にMCPサーバーを実装して、AIエージェントから同社が扱うデータを使える状態にしました。[2]
韓国では、子会社のNE Koreaが2026年10月1日付で、現地のEC事業者向け受注・在庫管理システム「Next Engine Korea」の運営事業を譲り受けました。NEは、韓国でもNAVERが買い物向けのAIエージェントの提供を始め、Kakaoも注文や決済まで行えるAIエージェントを計画していると説明しています。
NE Koreaが発表時点で進めるとしている取り組みは、以下の通りです。
| 取り組み | 発表時点の内容 |
|---|---|
| APIとMCPサーバー | 認証・許可した範囲でデータを開く |
| プラグイン化 | 各社のAIエージェントに組み込む |
| 操作画面 | 利用者が自分の言語で扱える |
| Cafe24との連携 | 日韓で相互に販売しやすくする |
OpenAIは2026年9月29日に、外部のサービスをAIエージェントに組み込むプラグインの仕組みを拡充しました。NEは、プラグイン化が実現すればEC事業者が普段使うAIエージェントの画面で受注や在庫の状況を確認できるとしています。
事業戦略から備える博報堂の支援
博報堂は、「Agentic Commerce ONE™」の一環として、エージェンティックコマースの本格普及を見据えた事業構造改革のコンサルティングの提供を始めると発表しました。同社は、AI検索最適化(AIO)や一時的なプロモーション施策にとどまらず、自社商品が選ばれ続けるための全社戦略を支援するとしています。[3]
支援が見据える期間は、3〜5年の中期の戦略立案と、5年超の長期の事業変革構想の2段構えです。博報堂は、未来の到達点から逆算するバックキャスティングで、今から年次で着手すべき研究開発や実証実験、パートナーシップの計画まで策定するとしています。
中期の支援で扱う主な項目は、以下の通りです。
| 項目 | 主な内容 |
|---|---|
| AI×買い物のグランドデザイン | マーケティングから流通までの全体像 |
| AIエージェント戦略 | 自社AIの所有有無や連携データを定義 |
| 顧客データ収集スキーム | AIと連携するデータの取得方針 |
| サプライチェーン改革構想 | 即時・自動注文に対応する受取りや配送 |
| 社内組織改革・CoE構想 | 全社横断の専門組織を設計 |
| ROIシミュレーション | パターン別に投資対効果を試算 |
中期の項目は、データの整備にとどまらず、物流や組織、投資対効果の試算まで及びます。長期の支援では、配送や買い方の変化から未来の買い物シナリオを作り、5〜10年後に残るべき事業モデルを構想するとしています。
商品情報から備えるGMO NIKKOの支援
GMO NIKKOは、2026年10月8日にEC事業者向けのコンサルティングサービス「GMO AIOブースト for EC」の提供を開始すると発表しました。専任のコンサルタントがECサイトの商品情報やデータ構造を分析し、AIエージェントが商品を正確に認識・比較・推薦できる状態かを確かめたうえで、商品情報の整理と設計を支援します。[4]
同社は、AI検索での企業情報の読まれ方を一次データで研究する「GMO AI検索ラボ」を運営しています。同ラボの知見を生かしたサービスの主な特長は、以下の通りです。
- 購買ニーズを捉えたプロンプト設計
- AIが比較しやすい商品データ設計
- ACP・UCPを踏まえたECサイト設計
商品データの設計では、商品名や価格、在庫に加え、商品の特徴や対象ユーザーまでを、AIエージェントが比較や推薦の判断材料に使いやすい構造へ整理します。提供はコンサルティング方式で、個社ごとの概念実証(PoC)から始まり、基本契約期間は6ヵ月です。
価格や在庫を機械が読める形で整える点は、NEがGoogleやOpenAIの求める条件として挙げた内容と重なります。ただし、NEは受注から出荷までの実行基盤を、博報堂は事業の構造を主に扱う点で、商品情報を整えるGMO NIKKOの支援とは範囲が異なります。[2][3]
エージェンティックコマースを支える決済インフラ
決済の面では、年間1.9兆ドル以上の決済を処理するStripeが、AIエージェントが新たな経済主体として活動する「エージェンティックエコノミー」の展望を発表しました。EC事業者の販売に関わる主な仕組みは、以下の通りです。
- AIエージェントの決済を受け付けるMPP
- 消費者が決済を委ねるLink
MPPは売り手がAIエージェントから決済を受け付ける側、Linkは買い手がAIエージェントに決済を任せる側の仕組みです。
AIエージェントの決済を受け付けるMPP
Stripeは、従来のeコマースは人間のために設計されており、AIエージェントはウェブサイトの閲覧やクレジットカード情報の入力を行わないと指摘しています。そこで同社は、決済特化型ブロックチェーンのTempoと共同で「Machine Payments Protocol(MPP)」を開発しました。[1]
人間向けのECとMPPによる決済の違いは、以下の通りです。
| 観点 | 人間向けのEC | MPPによる決済 |
|---|---|---|
| 支払う主体 | 人間 | AIエージェント |
| 料金の把握 | 料金ページを確認 | プログラム経由で認識 |
| 事前の準備 | アカウント作成 | 不要 |
| 決済の画面 | カード情報を入力 | 不要 |
表のとおり、MPPを使う決済では、売り手が整える対象が人の操作する画面からAIエージェントが読み取れるプロトコルへ移ります。機械が読める形を求める点は、商品情報についてNEが説明した事業者への要件とも共通します。[2]
消費者が決済を委ねるLink
Stripeは、企業がAIエージェントからの決済に対応した次の課題として、消費者が安全にAIエージェントへ決済を委ねる方法を挙げました。同社は2026年4月に、2億5,000万人以上が利用する消費者向けデジタルウォレット「Link」で、AIエージェントへの対応を始めています。[1]
Linkで消費者とAIエージェントが受け持つことは、以下の通りです。
- 消費者が決済をAIへ委譲
- 管理権限は人間が保持
- AIエージェントが決済を担う
人間が管理権限を手放さない設計は、消費者が安全にAIエージェントへ決済を委ねるという課題に応えるものです。Stripeは、AIエージェント向けのコマース基盤やデジタルウォレット、トークン単位の課金など6つのインフラを、「AI時代の金融インフラ」として構築しているとしています。
エージェンティックコマース対応の入口を選ぶ判断軸
エージェンティックコマースへの備えは、各社の支援が何を扱い、どれくらいの期間を見据えているかで見比べると整理しやすくなります。受注・在庫のデータ、事業構造、商品情報のどこから始めるかが分かれ目です。
ネクストエンジンは、受注・在庫・商品のデータをAIエージェントから使える状態にするものです。GMO AIOブースト for ECは商品情報の整理と設計を支援し、博報堂のコンサルティングは事業構造改革を3〜5年と5年超の期間で扱います。[2][3][4]
StripeのMPPは売り手が決済を受け付ける仕組み、Linkは消費者が決済を委ねる仕組みです。自社の状況に当てはめるときの判断軸は、以下の通りです。[1]
| 自社の状況 | 確かめること | 関連する支援 |
|---|---|---|
| 複数モールの受注・在庫を管理 | AIエージェントへのデータ連携 | NEのAPIとMCP |
| 日韓をまたいで販売したい | Cafe24との連携の進み具合 | NE Korea |
| 商品ページが人の閲覧向け | 価格や在庫、対象ユーザーの整理 | GMO NIKKOの商品情報支援 |
| 3〜5年先の事業計画を見直す | 物流や組織、投資対効果 | 博報堂の戦略支援 |
NEやGMO NIKKO、Stripeは、AIエージェントが読み取れる形で売り手が情報を用意する点で共通しています。ただし、NE Koreaのプラグイン化のように発表時点で準備中の取り組みもあるため、提供の状況を確かめてから比べる必要があります。
References
- ^ PR TIMES. 「新たな経済主体 AI による「エージェンティック エコノミー」展望」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000128.000077879.html, (参照 26-10-09).
- ^ PR TIMES. 「NE、「Next Engine Korea」の運営を承継し、エージェンティック・コマース対応を推進」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000068.000125456.html, (参照 26-10-09).
- ^ PR TIMES. 「博報堂、Agentic Commerce ONE™の一環として未来からのバックキャスティングで「エージェンテ ィックコマース事業戦略」をコンサルティングするサービスを提供開始」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001230.000008062.html, (参照 26-10-09).
- ^ PR TIMES. 「GMO NIKKO、AIエージェント経由の購買に対応する「GMO AIOブースト for EC」提供開始」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000005571.000000136.html, (参照 26-10-09).


















